TOP > 地域情報紙 > ヨコハマ想い vol.21 ズーラシアンブラス 指揮者オカピさん プロデューサー大塚治之さん

ヨコハマ想い


ズ-ラシアンブラス
指揮者 オカピさん(写真左下)

座右の銘は「千里の道も一歩から」。好き勝手に暴走しがちなメンバーをまとめなければならないため、優等生ぶりにもますます磨きがかかる、悩み多きリーダー。


プロデューサー 大塚 治之さん(写真下中央)

1961年生まれ。1987年イベント企画制作会社「スーパーキッズ」を立ち上げる。1999年にうさぎの弦楽四重奏団「弦うさぎ」を、2000年に「ズーラシアンブラス」を制作、親子のためのクラシックコンサート「音楽の絵本」をスタート。コンサート、CDのプロデュースを手掛ける。また若手作曲家育成に取り組む。

よこはま動物園ズーラシアのオープン1周年に結成された「ズ-ラシアンブラス」。その活躍はズーラシアにとどまらず、全国を制覇、台湾公演も行った。来年にはさらなる海外進出をもくろんでいるとか。子どもから大人まで虜にするその魅力を、生みの親、大塚治之さんに伺った。

クラシックを子どもたちのために

 日本で行われるクラシックコンサートは、残念ながら未就学児は入場できなかったり、料金が高いのが現状。「子どもたちに良い音楽を聞かせる機会を作りたい」と、1999年にうさぎの弦楽四重奏団「弦うさぎ」を結成しました。うさぎに弦楽器を演奏させるのは至難の業だと思っていましたが、案ずるより産むがやすし(笑)、やってみたら意外とうまくいったのです。
 当時ズーラシア開園の企画に携わっていたこともあり、2000年に金管五重奏「ズーラシアンブラス」を結成しました。ズーラシアンブラスのメンバーは絶滅が危惧される希少動物たち。『まじめでしっかり者のオカピが、チューバ奏者ホッキョクグマと一緒に世界を回って、孤高のトランぺッターインドライオン、お調子者のトロンボーン奏者スマトラトラを見つけ出してメンバーに誘います。その噂を聞きつけたトランぺッタードゥクラングールが、眠ってばかりいるホルン奏者マレーバクを誘って仲間入りした』こうして「ズーラシアンブラス」はできたのです。

一流の演奏を聴かせたい

 ズーラシアンブラスのメンバーは、みなトッププレイヤーです。以前はスカウトやオーディションをしていましたが、最近はトッププレイヤーからオファーが来ます。彼らはみな「エネルギーをお客様からもらえる」「気持ちよく演奏できる」と言います。オーケストラは構成上、弦楽器(バイオリンなど)が主役で、管楽器(トランペットなど)は脇役。管楽器奏者は優等生的演奏しか学んできていません。目立たずに演奏することが任務なわけです。ですが、ズーラシアンブラスでは「個」が出せる。ダイナミックなパフォーマンスをすればするほど、お客様の反応を直に感じることができるのです。 ズーラシアンブラスのメンバーは演奏後、ホールでお客様をお見送りします。その時にかけられる言葉がうれしくて、「次はもっと頑張ろう、もっと上手に演奏しよう」と思うのだそうです。舞台と客席でエネルギーのキャッチボールができると、ものすごく良い演奏会になるのです。

子どもだけでなく大人のファンが増殖中

 トラがやんちゃでいいし、バクが眠そうでもいい。そういうパフォーマンスから「感動」が生まれます。「トラ、かっこよかったね~」「今日もバクちゃん寝ちゃったね」とか、そういう親子の会話を引き出すことが大切なのです。子どもはいつも母親を見ています。母親がズーラシアンブラスの演奏に聴き入っている姿を見て、「自分も夢中になっていいんだ」と安心します。これが音楽の扉を開くことにつながるのです。
 音楽の感性は子どもの力だけでは身につきません。感性を豊かにするためには、親子で音楽に触れていくことが大切。大人も惹きつけなければいけないので、子ども向けの曲は1~2曲。かわりに、失われつつある秀作の童謡、山田耕筰や滝廉太郎などの曲を、クラシカルに面白くアレンジして演奏します。オカピを含む専属のアレンジャーたちが、互いに勉強し合いながら、チームで制作に当たります。子どもにも、大人にも、心に響く、眠くならないクラシックをお届けしたいと、日々切磋琢磨しています。

プレイヤーの苦労

 「動物」が演奏することで大変なことと言えば「音が聞こえにくい」ということです。これは、一流の奏者であっても難しい。初めて挫折を味わい、リベンジを誓うのだそうです(笑)。また、今までで一番良い演奏ができた、と言う奏者もいます。いずれにせよ、サービス精神旺盛な奏者しかズーラシアンブラスにはいません。ポジティブで、新しいことを追求したり、生み出したりすることが大好きな奏者ばかりなので、メンバーはみな仲がいいですね。今度、最も難しいとされることに挑戦しようと思っています。「弦うさぎ」にアイリッシュダンスを踊らせようと企んでいるんですよ!弦楽器を演奏しながら踊るなんてなかなかできませんから(笑)。

横浜から世界へ、愛が伝わる演奏を

 もっと音楽を身近に感じてほしい。生の演奏を聴きに来てほしい。スピーカーから流れるCDの音と、ホールで聴く生演奏の音とでは、質が全然違います。ホールの中の空気が震えるんですね。その震えを体で感じてほしい。最近の楽器は進化していて、マイクで音を拾えます。だけど、古くて最高級な楽器の音はマイクでは拾えない。生でしか聴くことができないのです。生演奏の素晴らしさを伝え、音楽を好きになる、という橋渡しをしていきたい。
 おかげさまで全国47都道府県でコンサートを開催できました。また、台湾公演も行いました。来年は、上海やマカオからのオファーも来ています。世界を目指したい、とメンバーのエネルギーも高まっています。国内では次のステップに進みたい、定期公演をしたいですね。季節を感じられる、例えば、お正月には紋付き袴で演奏するとか。あと、フルオーケストラにしたいです。これは夢の夢かなぁ…。

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