TOP > 地域情報紙 > ヨコハマ想い vol.8 ミュージシャン 秦 基博氏

ヨコハマ想い


歌は歌った瞬間に聴いてくれた人のモノになる。
ミュージシャン 秦 基博氏

profile
1980年、宮崎県生まれ。8歳から横浜で育つ。2006年、「シンクロ」でメジャーデビュー。この夏、映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌「ひまわりの約束」を担当。情景が目に浮かぶような歌詞、美しいメロディーは世代を超えて支持され、ロングヒットを続けている。

「そばにいたいよ 君のために出来ることが 僕にあるかな」
時に切なく、時に優しく…透明で繊細、なのに力強いその歌声は、
聴く人の心の奥深くに染み渡る。
『鋼と硝子でできた声』は今日も、聴く人の心をふわりと温かく包み込む。

港から遠い横浜

 宮崎県で生まれ、小学2年生の時に横浜に引っ越してきました。横浜と言っても青葉区は、自分が持っていた横浜の港のイメージからは遠かったですが、緑が多くいいところです。当時みなとみらい地区で行われていた「横浜博」に家族みんなで行ったのをものすごく覚えています。
 3人兄弟の末っ子で、自覚はなかったけど甘えん坊だったと思います。小学生の時は少年野球チームに入っていたり、けっこう明るい子どもだったのでは。やることなすこと、すべて兄のまねをしていました。

音楽への目覚め

 小学校高学年のときに、兄が持っていたギターに初めて触れました。中学では、やはり兄の影響でバスケ部に入ったのですが、部活が終わると部屋で曲を作って一人で弾いて歌っていました。高校で軽音楽部に入り、人前で歌ったらわりと評判が良くて。その時はまだカバーばかりで自作を聴いてもらう機会はなかったのですが、高校を卒業してから、知人の紹介で横浜のライブハウス(F.A.D YOKOHAMA 中区山下町168-1 レイトンハウス1F)の弾き語りイベントにオリジナル曲で出演するようになり、シンガーソングライターとしての自覚が生まれました。都内の大学に通いながら、横浜を中心にライブを続けました。

普段通りにいられる街、横浜

 8歳からずっと横浜で育ったのでいろいろな思い出がありますね。小学校でも中学校でも、遠足で山下公園に行った記憶があります。横浜駅近くの映画館にも行きましたし、ボウリング好きなのでハマボールにも行きました。みなとみらいは今もよく行くスポットです。好きな景色は山下公園や日本大通りの黄色く染まったイチョウ並木。大桟橋も好きですね。2008年から始めたアコースティックライブ「GREEN MIND」の初演は神奈川県民ホールでしたし、昨年末もパシフィコ横浜でライブを行いました。地元感あふれる横浜で行うライブは特別というより、ホームな感じがします。

「evergreen」の意味

 ギターを弾きながら曲を作るという「弾き語り」が、自分の音楽を表現する上での始まりの形です。greenという色には変わらないでずっとそこにあるもの、というイメージがあります。アコースティックギターも木から作られていて、緑と関係が深い。そういう意味を込め「evergreen」という弾き語りベストアルバムを作りました。ギター1本と歌、という世界の中で、自分の楽曲をどう表現していくのか?そこにどうアレンジを加え、ライブを作っていこうか…それが結実して作品となったのが今回のアルバムです。原曲を知っている人には新しい発見があると思うし、初めての人にとっては言葉やメロディーの本質的な部分に深く触れてもらえるアルバムだと思います。今作をきっかけに、多くの楽器を重ねて創った音楽の世界にも興味を持ってもらえたらうれしいです。

「歌は、歌った瞬間に、聴いてくれた人のモノになる」

 19歳の時、横浜のライブハウスのオーナーに教えてもらった言葉を大切にしています。発信して表現して終わりではなく、聴いてくれた人が何を感じ、何をイメージし、どういう気持ちになるか、その人自身の歌になるかどうか。その歌になれたなら幸せですし、それこそがシンガーソングライターとして、表現することの意味だと思います。それがないなら部屋で一人で楽しんでいればいい。他者とどうやって関わりあうのか、というヒントをもらったと思っています。「弾き語り」や「アコースティック」は自分の中にある一つの表現の振り幅。そこだけにとらわれるのではなく、制限なく、やりたいと思ったことを表現できたらいいな、と。自分の心が本当に動くものを作っていけたら。そこからどうやって聴く人に伝えていくか、ということを目標にしたいです。


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