TOP > ヨコハマよみうり2015年1月号 > ヨコハマ想い vol.10 俳優 別所哲也氏

ヨコハマ想い


感動ある人生
俳優 別所哲也氏

profile
慶應義塾大学法学部卒。1990年日米合作映画『クライシス2050』でハリウッドデビュー。1999年より日本発の国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル』を主宰し、文化庁長官表彰を受賞。観光庁「VISIT JAPAN 大使」、横浜市専門委員、映画倫理委員会委員に就任。第63回横浜文化賞受賞。1月17日(土)より、天王洲 銀河劇場にて、ミュージカル「SAMURAI7」に主演。

ショートフィルムで横浜の文化発展に寄与したとして、昨秋、横浜文化賞を受賞した別所哲也さん。代表を務めるみなとみらいのシアターにおいて、市と協力してさまざまなイベントに参加するなど、地域に根差した活動も評価されてのことだ。多彩な活動を続ける別所さんにインタビュー。

感動を分かち合いたい

 僕が俳優になったきっかけは、大学時代にESS(英会話サークル)で英語劇をやり出したことです。英語を身につける手段として入ったのですが、芝居をつきつめていくうちに、「他人の人生を演じながらお客様と一緒に感動したり、感動を分かち合うことは素晴らしいことだ」と思うようになったんです。
 1999年に日本発の国際短編映画祭である「ショートショート フィルムフェスティバル」を立ち上げ、映画館もつくり、オリンピックではキャスターもやり、ラジオのナビゲーターをしたりと、俳優以外にもさまざまなことをしていますが、根っこにある思いは同じ。人生のなかで、自分がどれだけ感動できたかということと、人とその感動を分かち合えたのか。それだけなんです。

かけがえのないひととき

 J-WAVEで朝の番組を始めて去年の10月から9年目に入りました。月曜から木曜まで6時から3時間やっています。最初は毎日1カ所に行くことにも慣れなかったんですが、今では、きちんと朝型人間になりました(笑)。毎朝、そのときどきのニュースに向き合ったり、リスナーの方々とコミュニケーションをすることは、自分にとって大切な時間だと思っています。
 娘は今5歳です。まだ補助輪がついてますけれど自転車に乗り始め、文字も覚え始めたところです。仕事柄、土日も仕事のことが多いのですが、できるだけ一緒にいる時間をつくるようにしています。横浜だと、赤レンガ倉庫あたりでのんびりすることもありますね。
 やりたいことが多い分、睡眠時間が削られ、今は1日4時間半。その代わり、全く夢を見ずに深く眠れるようになりました(笑)。

横浜から文化を発信

 2008年に短編映画専門の映画館「ブリリア ショートショート シアター」をみなとみらいにオープンして、今年で8年目になります。今回、名誉ある横浜文化賞をいただいて非常に光栄ですが、この年齢でいただいていいのかと恐縮しています。
 文化、カルチャーはカルティベイト(耕すの意)という言葉とつながっているように、文化というものは、まさに耕して育てるものだと思うんですよね。土を耕し、種をまき、自然やそこに住む人がかかわり文化を育てていく。これからもいろいろな形で文化貢献できるように頑張りたいと思っています。

コミュニティーシアター

 文化にせよ、産業にせよ、まちづくりにせよ、生み出すエネルギーと育てていくエネルギーの両方がないと続かないですね。僕らの場合は、共鳴して共感してくれる仲間が増えているからやっていける。シアターのある地域に住んでいる方や横浜を愛して来てくれる人のコミュニティーが徐々にできていき、支えられているのを感じます。
 21世紀の映画館は、単に映画を見るだけでなく、街の人々の情報交換の場であったり、災害時の避難拠点だったり、さまざまな機能を担っていると、シアターを運営して初めて気づきました。シアターのすぐ上のマンションに住んでいる方が、シアターにあるカフェにお茶をしに立ち寄るなど、コミュニティーをつなぐハブにもなっている。逆に言うと、皆さんに育ててもらい、今の形になったのかもしれません。

海の向こうを感じて

 これだけ海に囲まれた日本が、世界とどうつながっていくかというのが、僕の中にテーマとしてあります。俳優としてもシアターの運営者としても、横浜から見える太平洋のように、いつも海の向こうを感じて、国境や国籍を超えた仕事をこれからもしていきたいと思っています。横浜には中華街もありますし、日本の中で多様な国際性を感じられるという意味でも大好きな街です。
 シアターは、2月14日でオープンからまる7年を迎えます。10周年に向けて、どのようなことが提供できるか、僕もわくわくしながら企画していきたいです。期待していてください。

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