ヨコハマ想い
ぺインター ロコサトシさん
profile
愛媛県生まれ、東京都大田区育ち、横浜市在住。1970年代後半、桜木町東横線高架下で不思議なシルエットの壁画を描き始め、ウォールペイントの創始者とされる。’89年横浜博覧会で最大級のパビリオンをペイント、新本牧地区、みなとみらい21地区、横浜ポートサイド地区など、横浜のシティ・キャラクターを形成する重要な景観に作品を提供。
’99年に横浜市文化賞奨励賞 芸術部門賞受賞。作家活動と並行し、さまざまなワークショップを行っている。
Roccoさんの絵は横浜の至るところに描かれている。楽しくて、明るくて、見る人を元気にする絵。夢を追い続けるダンディなぺインター、Roccoさんにお話を伺った。
生まれたのは愛媛県の海辺の村。ヤギの乳を子ヤギに混じって飲んでるような、変な子どもでした(笑)。小学生で東京に越してきて、近所のお兄さんたちに連れられて、よく横須賀で遊んでいました。当時アイススケート場があってね。お兄さんたちに「ロコ坊」って呼ばれてた。あとから意味を知ってびっくり。スペイン語でLoco=バカ。バカ坊主だったんだね。LをRに変えてCを足して「Rocco」を名乗ることにしたの。「Rocco」の意味は「敏速」という意味もあるみたい。偶然にも自分の名前は敏。で、ロコサトシになりました。
小学生のころは写真みたいに具象な絵を描いていました。運動が好きで、スポーツ推薦で高校に。でも怪我等で挫折、「絵がうまいんだから絵の学校に行け」って先生に言われて、美術専門の高校に入り直したけど長続きしなかった。で、海の近くでボーっとしていたくて横須賀の野比に。横浜に絵描きの友達ができて、40年くらい前から横浜で暮らしています。当時アトリエを持っていないから、紅葉坂の青少年センターに通ってて、桜木町駅からすすけて黒い壁面の高架下を歩いていくの。その時、神様に「描きなさい」って頼まれたような気がして、壁面にチョークで描き始めた。気づいたら1.5㎞位の長さになっていて。ちょっと図に乗ったかな(笑)。10年間くらい一人で描いていました。
自分の小さな部屋で絵を描いていたら、孤独を感じてしまい、「外で描こう!」と。シンプルで単純な線を描き始めました。犬が感心してくれればいいかな、と。犬がじーっと見てくれた時はうれしかったなぁ。つながりたいという欲求を絵にして、自分と同じ孤独を感じている人に伝えたかったんだな。桜木町の壁画がメディアで紹介されるようになって、自分の存在がばれちゃって、横浜市に呼び出された。「怒られる」と思っていたら、横浜博覧会のパビリオンのウォールペイントやステージの仕事の話になり、横浜本牧JAZZ祭や横濱ジャズプロムナードでライブペインティングをしたり、横浜の姉妹都市サンディエゴとの交流が始まったり。今自分があるのは、横浜市や横浜に住んでいる皆さんのおかげ。横浜のロケーションが私の絵を作ってくれたんだ、と思って間違いない!
いろいろな所で絵を描き始めてから、子ども向けワークショップの依頼を受けるように。でも、描きたくない子に無理に描かせるのは嫌。だから自分が見本になって、畳1枚くらいの紙に描き始めると、今まで無関心だった子が心のドアを開き始めるの。仕上げるのが目的ではなく、思いのままに自由に描く。自分のワークショップで体験したアートが、各分野で生きていくための大事な酵素になってくれたらうれしいです。
アーティスト仲間で「マイティサミット」と「アートQ」というチームを作って、次世代の子どもたちへの環境づくりと復興支援をしています。アートって、人間が社会を創って、歪みができてから生まれたもので、その歪みを修復する道具だと思うの。生きるための最低限の道具。だからいつでも弱い人の味方で、最後の砦であってほしい。2011年に起きた東日本大震災以降、文化庁やNPOの協力で、被災した学校の体育館などでワークショップをやっています。また被災地には、私のペイントした車が遊び道具を詰め込んで、走り回っています。あと、仲間のアーティストがそれぞれの売上金を少しずつだけど持ち寄って、被災された人たちに直接お渡しする活動をしています。
子どものころ、たぶんビートルズのポスターだったと思うんだけど、ピストルの銃口に1輪のバラが挿してある絵があった。柔らかくて、優しくて、平和を表現していて。すごいメッセージだな、と脳裏から離れません。一生賭けてたどり着きたいビジュアルでした。市民の皆様が応援してくれたら、桜木町の高架下にもう一度描きたい。ビートルズの譜面を描きたいの。ブロックに五線を描くとちょうど良いでしょ?平和のメッセージを一生描いていきたいです。
◆「横濱ジャズプロムナード2015」10月10日(土)・11日(日)
ロコサトシさんのライブペインティングがあります。
主催・問合せ 横濱JAZZ PROMENADE実行委員会(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団内)
TEL.045(211)1510(平日10:00~18:00)